ChiChiChiより

欲しいもの①

その日はとても暑い夜だった。気持ち良く寝ていたはずなのに水分を欲した本能が俺の目を覚まさせた。

「くそっ!なんでこんなに暑いんだよ…あー、俺が寝落ちしてる間にエアコンの電源切りやがったな。普通タイマーかけておくとかにすんだろ。こんな暑い部屋で寝て俺が熱中症にでもなったらどうすんだよ!うぎぃぃぃ!!!ムカつく!ムカつく!!ムカつくんだよ!!あのドブカスくそゴミ可燃物が!!!」

俺は夜中にも関わらず感情のままに怒鳴る。普通に考えて迷惑な行為だが、俺は親にも近隣住民にも関わらない方がいいミステリアスな人認定されている。

そう、俺には深夜だろうと物音を立てても誰にも文句を言われない特権がある。昨日はエペにガチりすぎて罵声と台パンしまくったもんね。壁ドン、床ドンもし放題だ。守るべきモノを持つお前らにはできない背徳的な行為だ。んぁぁぁ💕💕最高〜💕

「くっそおおぉぉぉぉ!!!しねぇぇぇぇ!!!!てめぇがエアコン消したせいで目ェ覚めたし苛立って怒鳴らせるから喉もカラカラなんだよぉぉぉお!!!どー責任とんのぉ?????ドブカスがぁぁぁあ!!!うぎぇぇぇぇぃいいいぃぃ!!!」

ひとしきり怒鳴ってスッキリした俺は飲み物を求めて冷蔵庫向かう。

「さてさて、冷蔵庫ちゃまにはどんな美味しい飲み物が…はぁ!?ねぇのかよ!!!無料クーポンでもらった新発売のお茶は?!…あっちゃ~!今日のお昼飲んじったんだっちなぁ…仕方ない。水道水で我慢するにょす…」

俺はお茶の口になっていたが無いものは仕方ない。あまり好みではないが水道水を飲むことにする。

コップを持って蛇口を捻ろうとする。すると後ろから気配がした。

「あんた。お願い。いい加減にして。ママもうどうしたらいいの?確かにママは身体が弱くてお仕事できないけど家事は全部ママがやってるでしょ?あんた働いてお金稼いできてますって面してるけど家には全然入れてくれてないでしょ。いくつなってもゲームアニメ漫画って。少しは家庭に入れてよ。」

母だ。片手に財布を持っている。

これはチャンスだ。もしかすると俺の癇癪に負けてコンビニに連れて行ってもらえるかもしれない。

「ママ…なんでエアコンの電源勝手に切ってんだよ。お前のせいで俺は今喉が乾いて死にそうなんだ。早くコンビニに連れてってくれ。」

お前のせいだと自分のした悪事を自覚させる。そして罪悪感から行動させる。これ鉄則ね。

さぁ早く俺をコンビニに連れてってくれ。そして家の金でコーラを買ってくれ。

「は?何言ってんの?行かないから。ほら、これ持って出てって。」

俺は母から財布を渡される。そしてどこに隠していたのかとてつもない力で外へ追い出される。

「うぎぃぃぃぃ!!!ドブカスがぁぁぁ!!てめぇ何でだよぉぉ!!!くっそぉぉぉ!!!」

財布には5,000円だけ。誰も助けてくれない。俺は絶望した。

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